Nov 12, 2015

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A u t u m n
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色と秋


夕方、この部屋はこんなに暗くなると、秋になって気がつきました。
宵の空が此処にいる間に見られる季節です。
窓から見える桜の木の後ろで交ざり合う空に気づいて、ながくずっとずっと眺めてしまいました。
何か、知っている絵のようだったから。
この空を見かけたら、明日此処に行こうって、思い出せるような場所で在りたい。

少しづつ変わっていく秋の日間。
日差しは本当に綺麗で、正午を過ぎると入口から段々と中に陽が入ってきて、木靴はそれを浴びる。
でもほんの十分間程の出来事です。
そんなに急いではいないけれど、立ち止まらずに通り過ぎていく様。
それが消えたら硝子に映る影は色をなくして、その向かいを色があるものが横切った時、本当に不思議だった。
紋黄蝶がよく飛んできていました。
はっきりとした日差しは外の色までも変えていたけれど、日に日に柔らかくなっていきました。

朝に一階まで下りて、上って戻る非常階段と円い日向が好きでした。
秋の中つくり続けていられる時間も大好きでした。

花より果物を飾りたくなりました。
果物をのせていた器。
硝子の粉を型の中で熔融させて形をつくる、パート・ド・ヴェールという技法でつくられた硝子の器。
硝子の粉は触っても刺さらないのかな...
器は触ると石のベンチみたいに冷たいけれど鋭さはなく、ものの温度が揃った気がしました。
そう、この部屋は冬に暖かいってならない予感。暖かいのだけど多分、全部は緩まない暖かさのような。

これからの季節の為に入口に灯りをつけました。
線香花火みたいにじっと灯ってる。
それを見ていると秋なのに夏みたいで、いつかそれは落ちて、でも途切れながらも続いているもののたった一瞬みたい。

花壇に野葡萄を植えました。
宵の実が始まった場所から最後に受けとったのはこの野葡萄です。
挿し木で育つか不安だけれど、野葡萄の実は白から藍へと。取り残されたような色と。時間がつくる色と。来年の秋に。
綺麗な花も咲かせたいけれど。でも河原みたいな、野草とか。


残った野葡萄は床に並べた陶板に挟んでおきました。

水耕栽培を始めた球根。
球根は白いからといって白い花が咲くわけでなく、紫だからといって紫の花が咲くわけでなく。
道で見ている薄桃色だった夾竹桃の花はどんどん白に近づいているし。
色はふしぎです。
秋の植物のように、床も壁も石も、だいぶ色づいてきたな

此処にいて一番込み上げるようにすくわれるのは、
意とする想いや企みもなく、ただ真っ直ぐ同じ時同じ事を感じたという事だけの事が不意に起こる事。

真っ白な時にそれからの色を推してはかる事は耐えて、
でもだからこの場所にも、日々戸惑ったり優しくなったりするのかもしれません。

階段みたいな空をたくさん見た秋でした。 

秋は少しリズムが変わりました。